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英国現代奴隷法、日本企業はどう対応するべきか

Sustainavision Ltd.代表取締役
下田屋 毅

掲載日:2016年8月8日

2. 現代奴隷法の要求事項

この英国現代奴隷法2015では、対象企業に「奴隷と人身取引に関する声明」を会計年度に1度発行することを求めている。企業のサプライチェーン上に、強制労働や人身取引などの人権侵害の有無やリスクを確認させ根絶することを目的としている。対象は英国で活動する企業で、世界での売上高3600万ポンド(約50億)を超える企業で、英国と英国外の1万2千社が対象となっており、この中には英国法人を持つ多くの日本企業が含まれている。そして2016年3月末以降に会計年度が終了している企業は、2016年4月1日からこの法律に則った対応が義務付けられている。

この法令の要求事項で特徴的なのは、この「奴隷と人身取引に関する声明」を当該企業のウェブサイトで公開することが義務付けられ、しかも企業のウェブサイトのトップページに目立つようにリンクを貼らなくてはならないとされているところである。

この英国現代奴隷法2015*6によると、現代における奴隷の定義は次のように大きく3つに分けられている。① 奴隷・隷属・強制労働、② 人身取引、③ 搾取(性的搾取、臓器提供の強制等)

また該当する企業は、「奴隷と人身取引声明」の中に以下の内容を含むこととされている。

  1. 構造:組織の構造と事業内容及びサプライチェーン
  2. 方針:奴隷と人身取引に関連する方針(既存の関連する方針も活用)
  3. デューディリジェンスのプロセス:事業とサプライチェーンにおける「奴隷と人身取引」に関連する人権デューディリジェンスのプロセス
  4. リスクの評価と管理:事業とサプライチェーンのどこに奴隷と人身取引のリスクがあるか、また、そのリスクに対して評価し、管理するために講じるステップ
  5. パフォーマンス指標(モニタリング) :奴隷と人身取引が業務とサプライチェーン上で起こっていないことを確認する方法の有効性と、その行動のパフォーマンス評価指標による測定(モニタリング)。
  6. 研修:奴隷と人身取引に関する研修のスタッフへの提供

また、もし奴隷と人身取引に関して、企業がその内容を確認するステップを踏んでいない場合には、その手立てをしていないことを声明に書かなければならないとしている。

この英国現代奴隷法は、企業が法令順守をしなかった場合には、無制限の罰金が科せられるとしているが、この法令の興味深いところは、実際にはその罰則により企業に取り組みをさせるという仕組みでないところである。ちなみに英国政府は、対象企業が「奴隷と人身取引に関する声明」に関して要求事項を満たしているかについては確認しないとしている。

この法令が求めている仕組みは、英国において市民社会、NGOのプレッシャーが強いことを利用して、企業に透明性を強要し、市民社会、NGO、大学の研究者などがWeb上の声明を精査するという市民社会の監視の目を使用するところである。

また、当該企業は他社の声明と比較することにより、それぞれの企業がお互いにどのように実施しているのか、何をする必要があるのかなどを相互に理解して、次のステップに活用させることができる。これらにより、各産業でこの問題を真剣に取り組みをさせることを考えている。

3. 現代奴隷法に関するガイドライン

Profile

Sustainavision Ltd.代表取締役 下田屋 毅
在ロンドンCSRコンサルタント。大手重工会社の工場管理部にて人事・総務・労務・教育・安全衛生などに携わった後、環境ビジネス会社の立上に参画。英国イーストアングリア大学環境科学修士、ランカスター大学MBA。欧州と日本のCSRの懸け橋となるべくCSRのコンサルティング会社「Sustainavision Ltd.」をロンドンに設立、代表取締役。

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