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中堅・中小企業の海外事業展開における近未来型ビジネススタイル
―ローカルコミュニティとの共創戦略―

同志社大学商学部准教授
関 智宏

掲載日:2015年2月20日

ASEAN、タイビジネスの可能性

日本企業の海外事業展開といえば、その展開先の多くは中国である。企業に海外事業展開実績を問えば、その約半数は中国と答える。しかしながら、多くの日本企業が直面しているように、中国でのビジネス展開には近年さまざまなリスクが伴っている。そこで中国とは別の国に拠点を移転させることによってそのリスクを軽減させようとする「チャイナプラスワン」が話題になっている。これから大手企業だけでなく、中堅・中小企業もますます海外事業展開を仕掛けていくことが求められているが、ここで中国以外の国(地域)として年々期待が高まっている事業展開先がASEAN(東南アジア諸国連合)である。

ASEANは10ヶ国から構成されている。10ヶ国の経済格差は顕著であり、また問題でもあるが、日本企業の事業展開にとって、この格差の存在は事業展開上の重要なポイントとなる(この点は後に後述する)。ASEAN域内は、早い段階からFTA(Free Trade Agreement:自由貿易協定)を締結しており、これが2015年12月までに段階的に完全化を目指している。また2015年にはASEAN域内の専門労働者の移動や企業の投資活動が自由化され、AEC(ASEAN Economic Community:アセアン経済共同体)が部分的にも形成される見込みである。2015年は、日本企業のASEAN展開にとって重要な年となるとともに、AECの形成を踏まえた事業展開が求められる。

ASEANが日本企業の海外事業展開先として重要であるとする理由がある。その1つは、広域的なFTAの締結である。ASEANはその域内だけでなく、周辺国である中国やインドともFTAを締結している。つまりASEANは、第三国市場としてその役割を高めている。中国やインドでは、それぞれ多くの人口をかかえている。またこれらの地域では、富裕層、中間所得層の割合がこの数年で顕著に伸びている。特に中国については、生産拠点でなくもはや消費拠点に様変わりしつつある。ASEAN+中国・インドのFTAにより、中国の13億人、インドの11億人、そしてASEANの6億人が足し合わさり、じつに30億人という巨大市場が誕生する。この巨大市場の中心に立つ地域、それがASEANなのである。

ASEANが重要であるとするもう1つの理由は、GMS(Greater Mekong Subregion:大メコン圏)の開発である。これはアジア開発銀行(ADB)などが進めているプロジェクトであり、タイのバンコクを中心に、北は中国の昆明、東はベトナムのホーチミン、西はミャンマーのダウェイなど、南北・東西にわたる3億人人口と250万平方キロメートルを抱える経済回廊が整備されつつある。経済回廊の代表的なものとしては東西回廊がある。たとえばタイのバンコクからインドへものを海運で輸送する場合、これまではシンガポールのマラッカ海峡をとおらなければならなかった。これがいま整備されつつあるミャンマーのダウェイ港を使うことによって、バンコクからダウェイまで陸路で運び、ダウェイから直接インドに輸送することができる。輸送リードタイムが大幅に短縮される。

ASEANといっても構成される10ヶ国の間には経済格差がある。日本企業、とくに中堅・中小企業の海外事業展開にとって、その起点となるのは、GMSの開発状況からみても、とくにタイの首都バンコクであると考える。タイのバンコクからであれば、周辺国を中心に国境をまたがったクロスボーダー的な事業が展開しやすい。また、タイのバンコクにある国際空港からでは「1日10時間圏内」とも言われるほど、タイから他のASEAN諸国への接近性も強みとしてある。このようなことがないにせよ、日本企業のタイ進出は歴史的に古く、現在、約3000~4000の日系企業が事業活動を行っていると言われる。海外事業展開を目論んだ場合、業種にもよるが、すでに日系企業が飽和しており、賃金も上昇しており、さらに競争も激しいなどから、進出するにはすでに遅いとも言われる。しかしそう断言するのは正しくない。AECやGMSを見据えると、30億人という巨大市場を狙うことができる「いま」だからこそ、タイなのである。

2.近未来型のビジネススタイル―R社のケース

Profile

同志社大学商学部准教授 関 智宏(せき ともひろ)
2006年3月 神戸商科大学(現兵庫県立大学)大学院経営学研究科博士後期課程単位取得退学(博士(経営学))、2006年4月 阪南大学経営情報学部専任講師、2009年4月 阪南大学経営情報学部・大学院企業情報研究科准教授、2014年4月 阪南大学経営情報学部・大学院企業情報研究科教授、2015年4月より現職。この間、インペリアルカレッジロンドンビジネススクール客員研究員、チュラロンコン大学サシン経営大学院日本センター訪問研究員。現在、日本中小企業学会 幹事、アジア市場経済学会 幹事。大阪府中小企業家同友会憲章条例推進部、兵庫県中小企業家同友会アドック神戸など各企業・企業団体のアドバイザー。専門分野は中小企業論・中小企業経営論。
主要業績は、『現代中小企業の発展プロセス―サプライヤー関係・下請制・企業連携―』(ミネルヴァ書房、2011年)(財団法人商工総合研究所中小企業研究奨励賞準賞)、『タイビジネスと日本企業』(共編著、同友館、2012年)、『日本企業のタイプラスワン戦略(刊行予定)』(共著、同友館、2015年)。その他、著書・論文多数。

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