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中堅・中小企業の海外事業展開における近未来型ビジネススタイル
―ローカルコミュニティとの共創戦略―

同志社大学商学部准教授 関 智宏

掲載日:2015年2月20日

ローカルコミュニティとの共創戦略―日タイ中小企業ビジネスマッチングのケース

近未来に対応した新しいビジネススタイルを確立させるためには、日本企業が視察に代表されるようにただタイを訪れるだけでは十分ではない。できるだけ早いタイミングで、タイの経済社会のコミュニティに深く入り込む必要がある。しかし、日本企業がいきなりタイのローカル企業につながるわけではない。上のK氏のように、タイの経済社会のコミュニティに真にかかわっている人物を介すことが重要であると考える。

筆者が勤務する阪南大学では、中小企業支援機関としての中小企業ベンチャー支援センターを有している。中小企業ベンチャー支援センターは、タイの経済社会のコミュニティに、日本の中小企業をつなげるべく、タイのチュラロンコン大学サシン経営大学院内に設置されている日系企業向けコンサルティング機関と、阪南大学が協定を締結する大阪の企業団体との連携により、バンコクにて日タイ中小企業ビジネスマッチングを開催してきた。2012年度からはじめ、2014年度末現在で3回の開催実績がある。

このビジネスマッチングにはいくつかの特長がある。1つは、日タイ双方の大学と企業支援機関との間の連携を背景に、各機関が直接つながっている産業界との連携を直接的につなぎあわせている点である。阪南大学は上の大阪の企業団体のほかにも、多くの産業界と連携している。またタイのコンサルティング機関も、母体となるサシンがタイ政府の政策コンサルティングも担っていることから、工業省など産業界と太いパイプがある。2つは、公的な補助金は一切なく、民間企業による費用負担で運営されている点である。3つは、単なる一過性のマッチングイベントでなく、セミナーも含めた勉強会的要素を備えており、さらにマッチング前に、たとえば日系企業の海外事業展開のニーズを把握したり、あるいは事業概要を綿密にタイ側に伝えたり、さらにはマッチング後にも定期的なタイ訪問の受入および訪問先のアレンジやアドバイスおよび資料提供などを行っている。

このマッチングには年々参加企業が増えており、2014年度で約30社の日系中堅・中小企業が参加した。マッチングを行うことによって、個別商談後に、個々に連絡を直接的に取り合い、パンフレットやメール交換も行う企業もみられた。また参加企業のなかには、個別にマッチングの後日に、訪問を実施し続けていきながらビジネスチャンスを探るところもあった。このようにビジネスマッチングは、日タイ双方の企業間の直接的な対話を実施するきっかけとして機能した。しかしながら、現段階では、マッチングによる個別商談が直接的にビジネスには結びついてはいない。この理由としてはいくつか考えられるが、1つには価格などで折り合いつかない、2つには、事業内容の情報交換が事前に十分でなく、想定していた事業と異なっていた、3つには、そもそも日本側の参加者のなかにはビジネスを期待して参加したわけではない方が含まれていた、などの理由があると考える。最後の点はNATO(No Action, Talk Only)として、日本人が海外から厳しく批判される点である。

このようにビジネスマッチングには課題もあるが、参加企業のなかには、ビジネスマッチングの参加をつうじて、タイを事業拠点として位置づけ実践していく企業も着実に出てきている。いくつかのケースを紹介しよう。1つは、兵庫県三田市に本社をおくD社である。鉄道車両のブレーキ部品を製造している。ビジネスマッチングには毎年参加し、2013年度にはパートナー企業の敷地内に工場を設立した。またもう1つは。大阪府堺市に本社をおくN社である。ここは2012年度と2013年度の2度の参加であったが、その後、日本でのパートナー先からタイ東部にある敷地を紹介され、そこに工場を設立した。また上ですでに紹介したR社も、このビジネスマッチングの参加企業であり、2014年度にはすでに合弁企業を設立していたため、これまで参加していた社長の代わりに、すでに日本から派遣していたMD(日本人)が参加した。

4.「タイプラスワン時代」における日本企業の展望

Profile

同志社大学商学部准教授 関 智宏(せき ともひろ)
2006年3月 神戸商科大学(現兵庫県立大学)大学院経営学研究科博士後期課程単位取得退学(博士(経営学))、2006年4月 阪南大学経営情報学部専任講師、2009年4月 阪南大学経営情報学部・大学院企業情報研究科准教授、2014年4月 阪南大学経営情報学部・大学院企業情報研究科教授、2015年4月より現職。この間、インペリアルカレッジロンドンビジネススクール客員研究員、チュラロンコン大学サシン経営大学院日本センター訪問研究員。現在、日本中小企業学会 幹事、アジア市場経済学会 幹事。大阪府中小企業家同友会憲章条例推進部、兵庫県中小企業家同友会アドック神戸など各企業・企業団体のアドバイザー。専門分野は中小企業論・中小企業経営論。
主要業績は、『現代中小企業の発展プロセス―サプライヤー関係・下請制・企業連携―』(ミネルヴァ書房、2011年)(財団法人商工総合研究所中小企業研究奨励賞準賞)、『タイビジネスと日本企業』(共編著、同友館、2012年)、『日本企業のタイプラスワン戦略(刊行予定)』(共著、同友館、2015年)。その他、著書・論文多数。

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